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#7 湖東三山・西明寺 圧巻の至宝

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彦根、湖東三山のひとつ、西明寺に行ってきました。

ここ1年ほど、滋賀に来ることが多く、併せて滋賀寺巡りも活発化しています。

普段は湖北、長浜の町を訪れることが多かったのですが、今回は湖東と呼ばれる彦根周辺にやって来ました。

湖東は湖東三山と称される三寺が有名で、その一つがこの西明寺です。

入り口で入山料を払い、いざ、中へ。 (御朱印帳もこちらで先に預けました)

庭園をかき分け、進むと現れる本堂と三重塔!

西明寺の歴史

この本堂と三重塔は明治30年に国宝指定された、国宝第一号の建物だそうです。西明寺は湖東三山の中では最も後に設立したお寺とされており、1200年前の54代仁明天皇の勅願寺でした。

本堂自体は、760年前の鎌倉時代はじめに建立され、焼けうちに遭うこともなく、今日までやってきました。釘を1本も使わずに作られた建築様式が今もこうして朽ちることなく存在しているというのは、なんとも感慨深いですよね。

本堂に入ると、お寺の方が、お寺のこと、仏像のことをとても丁寧に解説してくださり、かなり有意義な時間を過ごすことができました。本堂内の仏像は、実は現在ほとんどが、県外での展示のためご不在。(「文化財よ、永遠に」に出展されるそうです。 )

ご本尊は秘仏により非公開で、厨子の扉は住職1代につき1度しか開くことができない決まりだそうです。(ちなみに現住職はすでに開帳済み…)

お写真で解説いただいたのですが、ご本尊は薬師如来さま。161.2cmの一木造り。木材には栢ノ木が使用されていて、平安後期の作品と言われています。

現在、厨子の老朽化に伴い厨子を修理していたので、ご本尊はビニールシートに覆われており、その厳重さが伺えます。

通常は、ご本尊を含め、19体もの仏像が須弥壇の上にいるのですが、先に述べた通り、日光菩薩さま、月光菩薩さまは東京国立博物館へ。十二神将も展示のためご出張されているそうです。
(いってらっしゃい、お気をつけて〜)


特別開帳 虎薬師

現在殆どの仏像が出張中とあってか、通常12年に1度、寅年にのみ開帳される虎薬師さまが特別開帳されていました。

なんて言ってもこの虎薬師目当てに西明寺を訪れたと言っても過言ではありません。

動物に乗っている仏像は菩薩部では見かけるが如来部での作例はあまりなく、大変めずらしいとされている。

公式ページのこの1行に心打たれ、西明寺拝観を決意。やっぱり私は「特別」やら「めずらしい」という言葉に弱いようです…

青瑠璃螺髪にやや前かがみなお姿。光背が華やかで、虎の台座が珍しい。像長は55cmで、思ったよりは小ぶりなお姿です。

虎がなかなかかわいくて、その不思議なアンバランス感を眺め、ついつい時間を奪われていました…

虎は、古くからの言い伝えで生命力が強い動物と言われており、強靭な虎と、薬師さまでより強力な力の元、人々の病平癒にご利益があったとされているそうです。


本堂後陣にも大量の仏さま!

特別拝観料は600円ですが、観る価値ありです!絶対おススメです!

公開期間は3月下旬~4月上旬/6月上旬~9月下旬と限られており、ここはチエックしてなかったので、かなりラッキーでした。

しかも拝観に伴い、三重塔内の壁画を模した散華をいただいただきました。
散華もお寺によって、様々なデザインがあって、買うこともできれば、催事の際にしか手に入れられなかったりと、エンカウント率も低め…ここで手に入れることができるなんて感動です…

そして、後陣に入れていただくと、一面仏像が…

織田信長の焼き討ちから逃れた仏像群らしく、親鸞聖人像、元三大師、役行者、文殊菩薩、釈迦如来、不動明王、弁財天、阿弥陀三尊像・・・その他にもいくつもの仏像が展示されていました。(これは圧巻)

特に気になった仏像がまず、役行者像。 手前に前鬼、後鬼を構えているのですが、この2体は夫婦!斧を持つのが夫で、水瓶を持つのが嫁とのこと。この2体の鬼の指は4本で、後ろまで回り込んで見させせていただいたのですが、夫の前鬼はちゃんとふんどしを締めているところが凝っていて可愛らしい。

余談ですが、降三世明王の台座が大自在天と鳥摩というヒンドゥー教の神様夫婦なのですが、このように夫婦が仏像として表現されているのは、なんだかドキドキするというか、背景を考えちゃいます。なんというかロマンがある。

また、釈迦如来は清涼寺式のもの。 清涼寺式の釈迦如来は初めて実物を見ましたが、やっぱり螺髪の渦巻きが特徴的で目を惹かれます。本像は鎌倉初期のもので、木造、彩色、像長134.8cm。

手相がしっかりと刻まれており、全体のバランスでいうとお顔が大きい。肌は見えず、通肩の着こなしをされており、衣紋の波打ちが清涼寺式の特徴を表しています。なんというか濡れた布が体にぴったりフィットしたような、そんなデザインですよね。

仏像の中でも、長谷寺式、や清涼寺式、など寺発の独自デザインが発展しているというのは、仏像を見ていく中でもおもしろいですね。

さらに、阿弥陀三尊像は、右に観音菩薩、左に勢至菩薩を構えており、鎌倉時代、木造の玉眼、漆箔の截金を施した仏像で、快慶の作品ではないかとも言われているらしいです。

滋賀は、あまり快慶の作品が流通していない印象で、こちらも快慶の作品と断定はできないようなのですが、作風が近く、快慶もしくは快慶に近い仏師の作品だろうと言われているようです。

布の表現は繊細に作られており、細身で、スタイルが良いのが特徴的。 両菩薩の天衣も繊細に作られており、通常の明かりの下では穏やかな表情なものの、ライトで像を照らすと、見下すように目を開き、怖い印象を与えます。ライティングで見え方が変わるのは、仏像あるあるかもしれませんが、印象がガラリと変わるというのは、1つで2度おいしいですね。


ご朱印は三種類

今回いただいたご朱印は三種類。通常授与の殿のもの、そして、今回の虎薬師特別公開に併せた特別ご朱印。なんと1000枚限定なので、気になる方はお早めに… そしてもう1枚は、今年限定、猪年のご朱印です。十二神将を抱えられているお寺ならではのお楽しみご朱印ですね!(毎年行っても飽き足らない!)

個人的には、三重塔の特別開帳も行なっているので、次はその時期にまた来たい。

どうしても滋賀は、湖北に行く機会が多くなってしまうのですが、こうして湖東でも歴史あるお寺に出会えて、心揺さぶられるので、滋賀全体を通していろんなお寺や仏像を巡りたいと思うようになりました。

滋賀には“湖東三山”のように、“湖南三山”や、“余呉三山”なんかもあるようで、まだまだ巡り足りません。個人的には余呉地区が大好きなので、余呉三山巡り待った無し。

では。

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