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【美術展記 #5】奈良の至宝「奈良大和四寺のみほとけ」

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東京国立博物館で開催されている企画展「奈良大和四寺のみほとけ」に行ってきました。

この企画展は奈良を代表する四つの寺院、長谷寺、室生寺、岡寺、安倍文殊院から、彫刻をはじめとする文化財がお越しになっています。

長谷寺("長谷寺式十一面観音像"について)

入って正面には長谷寺の十一面観音菩薩立像(銅像/鎌倉時代)
銅像らしく繊細な作りで、向かって左の天衣(てんね)は台座下に垂れ、右は後ろにくるりと翻るアシンメトリーなつくりが特徴的。

同じく、長谷寺の十一面観音菩薩立像(木造/平安時代)は、向かって左手には錫杖、右手に水瓶を持ち、方形の岩座に立つ姿。こちらは本尊の十一面観音菩薩立像を彷彿とさせる。

通常、十一面観音像といえば、右手に水瓶を持ち、左手は何も持たず、蓮華座に立つ姿が一般的ですよね。

こうした左手に錫杖を持ち、方形の岩座に立つ姿は長谷寺式十一面観音像と呼ばれ、独特な作りであることを示す。

この"長谷寺式"は、何も奈良の長谷寺だけを示すものではない。

鎌倉の長谷寺のご本尊である十一面観音像や、茨城の新長谷寺、西麻布の長谷寺(ちょうこくじ)、奈良の影現寺なども、長谷寺式を用いた造形が成されており、深い関係性が伺える。

岡寺(涅槃像の時代変化)

岡寺からの出展のイチオシは何と言っても釈迦涅槃像(木造/彩色/鎌倉時代/13世紀)

ちょうど人ほどの大きさ。涅槃像も、時代によって造形の変化が伺え、平安時代と鎌倉時代で表現の変化を迎える。

平安時代の涅槃像は、両手を体に平行にした造形が施されている。 実際に、平安時代の作品で、涅槃の姿が表現されている国宝“絹本著色(けんぽんちゃくしょく)仏涅槃図”(金剛峯寺/平安時代)でも、両手ともに、平行に体に沿う形で描かれてる。 (金剛峯寺の“絹本著色仏涅槃図”は、現存する日本最古の涅槃図と言われています)

一方で、鎌倉時代以後は、肘をつくなど、右手で頭を支えるような体制が流行したとされている。 この岡寺の涅槃像もまさにその様式を表したもので、近年目にする涅槃像では、この鎌倉時代以後の姿が一般的になっていると言えるでしょう。

ちなみに、法隆寺、五重塔内の塑像の涅槃像は、お弟子さまに手を差し伸べるようなお姿。 こちらは、711年(奈良時代)の作品と言われており、時代と造形にはまだまだ奥の深さを感じています。

室生寺(板光背は見どころです)

メインに並ぶのは、室生寺の地蔵菩薩立像と、十一面観音菩薩立像。

ともに、木造、彩色、平安時代の作品で、光背が板光背というもので作られてる。

板光背とは、1枚、もしくは複数枚の木の板に、絵の具や墨などの模様を描きいれることで作られる光背のことで、平安時代(前期)の奈良地区に多い表現技法とされている。

両像を見比べてみると、十一面観音の方が、地蔵菩薩と比べて書き込みは少ないものの、彩色をみるとともに鮮やか。 十一面観音のお顔の造形は、頬のふっくらした感じや、ほのかに赤く彩られる唇が女性的な魅力を感じた。

安倍文殊院からは、国宝の文殊菩薩像内納入品が出展。

奈良は未だ東大寺と興福寺にしか行ったことがなく、まだまだ未体験地区。 博物館で見るのももちろんいいですが、やっぱり歴史残るその土地で見たいもの。

今年はまた奈良に行く機会を増やしたいところ。

では。

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